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岡山地方裁判所 昭和52年(ワ)738号 判決 1981年8月03日

原告

宗安昌代

ほか一名

被告

荻野豊

主文

一  被告は、原告宗安昌代に対し金二、九九五、一五三円、及び内金二、七二五、一五三円に対する昭和五一年五月一六日より支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告宗安千代美に対し金一、九五六、三八六円、及び内金一、七八六、三八六円に対する昭和五一年五月一六日より支払済に至るまで年五分の割合による遅延損害金を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを七分し、その一を被告の負担とし、その余は原告らの負担とする。

五  この判決は、第一、二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告宗安昌代に対し金一六、一〇五、七二〇円、及び内金一五、一〇五、七二〇円に対する昭和五一年五月一六日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、原告宗安千代美に対し金二二、〇一〇、一五四円、及び内金二一、〇一〇、一五四円に対する昭和五一年五月一六日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

(一) 発生日時 昭和五一年五月九日午後〇時一〇分頃

(二) 発生場所 倉敷市児島宇野津先スカイライン

(三) 加害車両 普通乗用車

(四) 右運転者 被告

(五) 被害車両 自動二輪車

(六) 右運転者 訴外宗安民雄(以下、訴外民雄という。)

(七) 態様 訴外民雄が被害車両を運転して前記道路を鷲羽山方面から水島方面に向けて進行中、加害車両を運転していた被告がセンターラインを越えて対向して来たため、両車が衝突した。

2  責任

被告は、加害車両の保有者としてこれを自己のために運行の用に供しているものであるから、本件交通事故につき自賠法三条の責任を負う。

3  被害者の受傷、死亡

訴外民雄は、前記事故により、頭蓋底骨折、脳挫傷等の傷害を負つて入院したが、昭和五一年五月一五日右受傷により死亡した。

4  損害

(一) 訴外亡民雄の損害(逸失利益) 金四〇、七二五、四三五円

訴外民雄は、本件事故当時二七歳で、二輪車販売修理業を営んでいたが、その収入は不明であるため賃金センサスの男子労働者の平均賃金を基準とすべきであり、昭和五〇年賃金センサス第一巻第一表企業規模計産業計学歴計の給与額に一〇パーセントを加算した二、六〇七、八八〇円をもつて年間収入とみるべきところ、亡民雄の就労可能年数は四〇年であるから、ホフマン式計算法(係数二二・三〇九)によつて中間利息を控除し、生活費控除を三〇パーセントとみて算出すると、逸失利益として四〇、七二五、四三五円の損害がある。

(二) 原告昌代の損害 合計金六〇〇、六四三円

(1) 治療費 金一五八、二〇三円

訴外民雄は、昭和五一年五月九日から同月一五日まで七日間、水島中央病院に入院し、その間の治療費として金一五八、二〇三円を要し、これを原告昌代において出捐した。

(2) 入院雑費 金四、二〇〇円

右入院中の諸雑費として七日間で金四、二〇〇円(一日六〇〇円)を要したが、同様に原告昌代がこれを出捐した。

(3) 付添看護料 金一七、五〇〇円

訴外民雄は、入院中危篤状態が続いたため、原告昌代等が付添つたが、その付添費として七日間で金一七、五〇〇円(一日二、五〇〇円)を要し、これを原告昌代が負担した。

(4) 交通費 金二〇、七四〇円

訴外民雄が危篤状態で入院したため、同人の実父母、実兄がタクシーで病院に急行したが、右タクシー代金として金二〇、七四〇円を要したが、これを原告昌代が出捐した。

(5) 葬儀費用 金四〇〇、〇〇〇円

右費用は原告昌代が出捐した。

(三) 慰藉料 合計金一〇、〇〇〇、〇〇〇円

原告昌代は、訴外民雄の妻であり、同千代美はその子(四歳)である。原告らは、一家の支柱を失い、多大な精神的損害を蒙つたが、右慰藉料は原告昌代につき金六、〇〇〇、〇〇〇円、同千代美につき金四、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

(四) 弁護士費用 原告らにつき 各金一、〇〇〇、〇〇〇円

5  相続と損害の填補

(一) 訴外民雄の逸失利益の損害賠償請求権は、同人の死亡により妻である原告昌代がその三分の一である一三、五七五、一四五円、子である原告千代美がその三分の二である二七、一五〇、二九〇円苑相続承継した。よつて、原告昌代の総損害は、これに前記3(二)ないし(四)の各損害を合計した金二一、一七五、七八八円であり、原告千代美の総損害は、これに前記3(三)、(四)の各損害を合計した金三二、一五〇、二九〇円である。

(二) 原告らは、自賠責保険金一五、二一〇、二〇三円を受領したが、これを相続分に従い、原告昌代が五、〇七〇、〇六八円、原告千代美が一〇、一四〇、一三五円余宛、それぞれ訴外民雄の逸失利益分に充当すると、原告昌代の残損害額は金一六、一〇五、七二〇円、同千代美の残損害額は金二二、〇一〇、一五四円となる。

6  よつて、原告昌代は被告に対し金一六、一〇五、七二〇円及び弁護士費用を除く内金一五、一〇五、七二〇円に対する訴外民雄の死亡の翌日である昭和五一年五月一六日から、同千代美は被告に対し金二二、〇一〇、一五四円及び弁護士費用を除く内金二一、〇一〇、一五四円に対する同じく昭和五一年五月一六日から、各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実中、原告主張の日時場所において被告および訴外亡民雄がそれぞれ原告主張の車両を運転していた事実は認めるが、その余の事実は否認する。

2  同2の事実中、被告が加害車両の保有者として自己のため運行の用に供していたことは認めるが、その余は争う。

3  同3の事実中、本件交通事故と訴外民雄の死亡との因果関係は否認する。訴外民雄は、センターラインを越えて被告車の進路前方を対向進行し、被告車の前方一〇メートルの地点で自ら転倒し、頭部を路面に打ちつけ、これが原因で死亡したものである。

4  同4、5の事実はいずれも不知。

5  同6項は争う。

三  抗弁

本件交通事故は、訴外民雄がセンターラインを越えて、被告車の進路前方(本件道路東側車線)を対向進行し、被告運転車両の前方一〇メートル位の地点で転倒したことにより発生したものであるから、被告には何らの過失もなく、訴外民雄の一方的過失によるものである。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は否認する。

本件交通事故は、被告がセンターラインを越えて進行し、これを避けようとして右転把した訴外民雄と、左車線に戻ろうとした被告とが東側車線で衝突したもので、被告の一方的過失によるものである。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因1の事実中、原告主張の日時、場所において被告および訴外民雄がそれぞれ原告主張の車両を運転していた事実は当事者間に争いがないが、本件事故の発生、特に被告の車両運転と訴外民雄の受傷、死亡との因果関係については争いがあるので、まづ本件事故の態様について検討する。

1  成立に争いのない乙第一ないし二二号証、証人藤本哲夫の証言(第一回)によれば、本件事故現場付近の道路は、鷲羽山に向う山間部の南北にのびる歩車道の区別のないアスフアルト舗装道路で、片側車線幅三・四メートルの中央線および路側線が白線で表示されており、現場付近は南行線よりみて上り勾配の坂道で右にカーブした所であること、原告主張の日時場所において、訴外民雄は自動二輪車を運転し右道路を北行し、被告は普通乗用車を運転して右道路を南行していたことが認められる。

2  本件事故については、その一方当事者である訴外民雄が事故後間もなく死亡し、本件事故の態様について供述するところがないので、もう一方の当事者である被告の供述についてみるに、被告本人尋問の結果と成立に争いのない乙第三号証によれば、被告は、本件道路を時速約五〇キロメートルの速度で進行して本件事故現場にさしかかつたが、右カーブを進行する際に速度を落さず浅いカーブで進行しようとして、別紙図面<1>点(以下別紙図面の表示については記号のみをもつて表示する。)付近から対向車線にはみ出したが、その時<ア>点に訴外民雄の自動二輪車が時速約五〇キロメートルの速度で対向してくるのを発見し、<2>点付近で東側車線に戻ろうとハンドル操作をするとともに警笛をならし、急ブレーキをかけたが、その時訴外民雄は<イ>点に進行しており、そのままブレーキをかけることもなく東側車線を進行してきて被告車の一〇メートル前方付近で自ら転倒し、停止した被告車に<×>点で衝突した旨供述している。

右供述のうち、被告が<2>点付近で警笛をならしたとする点については警察による実況見分時に指示説明することもなかつたもので、ただちに措信しがたいこと、自車が停止した後に転倒した民雄が衝突してきたとする点についても右実況見分時には<×>点で衝突した後<3>点で停止したとしているもので、同様に措信できないことを除き、被告車の運行に関しては、成立に争いのない乙第一ないし一四号、証人藤本哲夫の証言によつて認められる本件事故現場に残された痕跡にも合致し、これを信用することができる。しかし、被告が目撃した訴外民雄の自動二輪車の位置についてはただちに措信しがたい。すなわち、(イ)右被告の供述によると、ほぼ同速度の両者が対向してくる際、被告車が<2>点から<×>点まで急ブレーキをかけながら二一・四メートル進行する間に民雄車は<イ>点から<×>点まで一四・二五メートルしか進行しておらず、民雄車の転倒を考慮に入れてもその距離関係が不合理であること、(ロ)民雄車の衝突前の擦過痕(長さ一・一メートル、〇・七メートル、〇・四メートルのもの)の示す方角からみると民雄車が東側車線中央付近である<ア>点<イ>点を進行してきたとするその方向にも疑問が残る点がある。むしろ、証人藤本哲夫の証言(第一、二回)および成立に争いのない乙第一ないし一四号証によれば、訴外民雄車は、東側車線上で転倒し、<×>点で被告車と衝突したものであるが、前記擦過痕が示す方角より推認すれば、転倒前の数メートル以上の手前においては中央線付近(その東側か西側かは判別しがたい。)を進行してきたものと認めるのが相当である。右認定に反する証人荻野百合子の証言、被告本人尋問の結果はただちに措信できない。また、永井俊之の証言により真正な成立が認められる甲第一一号証の一五、一六によつて認められる擦過痕については、証人藤本哲夫の証言(第二回)により民雄車による擦過痕でないと認められ、これに反する証人武田哲治の証言も措信することができない。

3  以上の各証拠によれば、本件事故は、被告が普通乗用車(車幅一・六九メートル)で右カーブを曲る際に中央線を〇・九メートル以上はみ出して進行してきたところ、折柄自動二輪車で中央線付近(その東側か西側かは判別しがたい。)を対向してきた訴外民雄がこれを発見して危険を感じ、ハンドル操作を誤つて東側車線上で転倒するとほぼ同時に<×>点で被告車と衝突したものであると認めることができる。

4  そして右認定事実と成立に争いのない甲第四号証によれば、右転倒ならびに衝突時の衝撃により、訴外民雄は頭蓋底骨折、脳挫傷等の傷害を負い、昭和五一年五月一五日右受傷により死亡したことが認められる。被告は、訴外民雄の死亡は自ら転倒して頭部を路面に打ちつけたことによる受傷が原因であるから、被告車との衝突との因果関係はない旨主張するが、民雄の受傷(したがつてそれによる死亡)は、衝突前の転倒が原因かあるいは衝突後のはね返りによる衝突が原因かは判別不能ではあるが、前示認定の本件事故態様によれば、訴外民雄の衝突直前の転倒自体が被告のはみ出し運転による危険の招来が原因と考えられるもので、被告の運転行為による本件事故の発生と訴外民雄の受傷、死亡との因果関係を否定することはできない。

二  責任

1  被告が加害車両の保有者として自己のため運行の用に供していたことについては当事者間に争いがなく、これに右認定事実を合せて考えれば、被告が本件事故につき自賠法三条による賠償責任を負うことは明らかである。

2  ところで被告は、本件事故の発生につき訴外民雄の過失を主張するので、被告の責任の範囲を定める過失相殺を検討するに、前示認定の本件事故発生の態様によれば、本件事故は、被告が右カーブ通過の際に〇・九メートル以上対向車線にはみ出して進行したこと、訴外民雄が敢えて中央線付近(その東側か西側かは判別しがたい。)を走行してきたこととの二因が重つて危険を招来させ、被告はその直後自車線内に戻ろうとしたものの、訴外民雄の狼狽を招き、訴外民雄がハンドル操作を誤つて東側車線上で転倒し、進行してきた被告車と衝突しているもので、その危険招来の過程には双方同程度の過失があるものの、その回避過程においては訴外民雄により大きな過失が認められる。しかし、危険回避過程における過失は危険招来過程における過失と切り離して考えることができず、これを総合的に把えるときは、本件事故発生における被告と訴外民雄の過失割合を四対六と評価するのが相当である。

三  損害

1  訴外民雄に生じた損害(逸失利益)

成立に負いのない甲第一号証、同第一〇号証の一、および原告宗安昌代本人尋問の結果によれば、訴外亡民雄は、昭和二四年一月生まれで本件事故当時二七歳であり、以前はオートバイの販売会社に勤務していたが、昭和四五年五月からは「宗安モータース」と呼ばれる二輪車販売業をはじめ、以来一応安定した営業を続けていたことが認められる。原告昌代は、「宗安モータース」の月額収入は二・三〇万円程度であつたと供述するが、これを裏付ける証拠がなく、ただちには採用することができない。しかし、訴外民雄の右営業状態から少くとも男子労働者の平均賃金程度の収入を得ていたものとみることはでき、これを当裁判所に顕著な昭和五一年賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者平均年収によれば二、五五六、一〇〇円であることが認められる。これを基礎に亡民雄の死亡による得べかりし利益額を算出すると、生活費控除を三割と解するのが相当であり、六七歳までは就労可能とみうるので稼働可能年数は四〇年であるから、その中間利息をホフマン式計算法(係数二一・六四二六)によつて控除し、現価を求めると、三八、七二四、四五四円と認めることができる。

計算式:2,556,100円×(1-0.3)×21.6426=38,724,454円

2  原告昌代に生じた損害

(一)  治療費

成立に争いのない甲第二号証の一および原告宗安昌代本人尋問の結果によれば、原告昌代は本件事故により受傷した亡民雄の治療費として水島中央病院に金一五八、二〇三円を支払つたことが認められこれに反する証拠はない。

(二)  入院雑費

成立に争いのない甲第二号証の一、甲第四号証および原告昌代本人尋問の結果を総合すれば、訴外亡民雄は昭和五一年五月九日から同月一五日までの七日間水島中央病院に入院したことが認められ、その間原告昌代において相当額の雑費の出捐を余儀なくされたことは容易に首肯でき、その額は一日当り金六〇〇円を相当とするから、右雑費出捐による損害は合計金四、二〇〇円となる。

(三)  付添看護料

成立に争いのない甲第四号証と原告昌代本人尋問の結果によれば、原告昌代および訴外亡民雄の両親は、訴外民雄が入院の間、訴外民雄が危篤状態が続いたため、その付添看護にあたつたことが認められ、その経済的負担が原告昌代に帰したことも明らかで、その額は一日当り金二、五〇〇円を相当とするから、その付添費は合計一七、五〇〇円となる。

(四)  交通費

原告昌代は、民雄危篤のためその実父母、実兄がタクシーで病院にかけつけた交通費として金二〇、七四〇円の損害が生じたと主張するが、原告昌代に右支出が生じたとしても、ただちに本件事故と相当因果関係ある損害であるとは認められないので、右主張は採用することができない。

(五)  葬儀費用

成立に争いのない甲第八号証、甲第九号証の一ないし一一、原告昌代本人尋問の結果によれば、原告昌代は、亡民雄の葬儀費用として、四〇六、八五〇円支払つたことが認められ、この費用中同原告が主張する金四〇〇、〇〇〇円が相当因果関係のある損害と認められる。

(六)  原告昌代に生じた右(一)ないし(五)の損害を合計すると金五七九、九〇三円である。

3  慰藉料

本件事故により、訴外民雄が死亡し、その妻である原告昌代、その子である原告千代美が多大な精神的苦痛を蒙つたことは容易に認められる。右精神的苦痛を慰藉する金額としては、原告昌代については六、〇〇〇、〇〇〇円、同千代美については四、〇〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

四  過失相殺の適用と損害の相続ならびに損益相殺

1  訴外亡民雄の逸失利益の損害三八、七二四、四五四円は、前示二、2の過失相殺を適用して被告が賠償すべき額を定めると、金一五、四八九、七八一円となる。右民雄の損害賠償請求権は、同人の死亡により妻である原告昌代がその三分の一である五、一六三、二六〇円、子である原告千代美がその三分の二である一〇、三二六、五二一円宛、それぞれ相続承継した。

2  原告昌代に生じた前示三、2の損害五七九、九〇三円同原告の前示三、3の慰藉料六、〇〇〇、〇〇〇円の合計金六、五七九、九〇三円についても、前示過失相殺によると、被告の賠償すべき額は二、六三一、九六一円である。したがつて、原告昌代の被告に対する損害賠償請求権は、前項によるものと合せて、金七、七九五、二二一円となる。

3  原告千代美の前示三、3の慰藉料四、〇〇〇、〇〇〇円についても、前示過失相殺によると、被告の賠償すべき額は一、六〇〇、〇〇〇円である。したがつて、原告千代美の被告に対する損害賠償請求権は合計一一、九二六、五二一円となる。

4  本件事故により自賠責保険から原告らに対し金一五、二一〇、二〇三円の交付があつたことは、原告らがこれを自認するので明らかな事実と認めうるところ、右金額は法定相続分に従い原告昌代が五、〇七〇、〇六八円、原告千代美が一〇、一四〇、一三五円宛それぞれ配分されるもので、右に従い原告らは損益相殺されることとなるので、原告昌代は被告に対し損害金残金二、七二五、一五三円、原告千代美は被告に対し損害金残金一、七八六、三八六円の賠償を求め得ることとなる。

五  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告らは、被告に対する本件損害賠償請求権の行使のため、弁護士に本件訴訟の訴訟委任を余儀なくされ、相当額の費用の負担を要することは明らかである。本件訴訟の経過ならびに前示の請求し得べき金額に照らすと、原告らの弁護士費用のうち、原告昌代については二七〇、〇〇〇円、原告千代美については一七〇、〇〇〇円を被告に対し負担させるのが相当であると認められる。

六  以上のとおりであるから、原告昌代は被告に対し合計金二、九九五、一五三円及びこれより弁護士費用を控除した内金二、七二五、一五三円に対する損害発生後である昭和五一年五月一六日より支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めることができ、被告千代美は被告に対し合計金一、九五六、三八六円及びこれより弁護士費用を控除した内金一、七八六、三八六円に対する前示昭和五一年五月一六日より支払済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

よつて、原告らの請求はいずれも右の限度において認容し、その余の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大内捷司)

別紙図面〔略〕

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